Toxic elements 有毒な元素と化合物


タリウム
タリウムはカリウムと同様+1価のイオンになりやすく、イオン半径もそれぞれ0.150nm、0.138nmと似通っています。
そのため、タリウムイオンはカリウムイオンと同様細胞内に取りこまれていきます。

カリウムの細胞内での主なはたらきは、筋肉の収縮、神経での刺激伝導、たんぱく質の合成、細胞内外への水の輸送などがありますが、
タリウムはこれらの生体内反応を阻害することで毒性が発現するようです。
タリウムは腸や腎臓から排出されるのですが、身体がカリウムと間違えて再吸収してしまいます。

解毒剤は青色インク染料のプルシアンブルー。
プルシアンブルーはタリウムを吸着して排出を促します。
プルシアンブルーとは、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)、Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3。ルビジウムやセシウムの排出にも有効です。

カドミウム
人間の必須元素のひとつである亜鉛に性質が似ているため、体内に吸収されます。
カドミウムはたんぱく質のチオール基(-SH)と結合して変性させ、腎臓などに蓄積して腎機能をはじめとした細胞や組織に障害を起こします。

腎臓では、必要な成分・不要な成分の両方をいったん尿の中に出し、必要な成分を再吸収するという機構で不要成分を排出しています。
しかし腎臓にカドミウムが蓄積してくると、糖やアミノ酸、たんぱく質などを再吸収する機能がうまくはたらかなくなってしまいます(ファンコニー症候群)。

カドミウムの慢性障害によって、イタイイタイ病で知られる骨や関節が弱くなる症状が現れますが、原因として
リン酸の再吸収阻害(骨の主成分はリン酸カルシウム)、腎臓でのビタミンD3活性化機能の低下などが考えられます。

水銀
水銀は大きく分けて、水銀蒸気や塩化水銀などの無機水銀と、メチル水銀などの有機水銀に分けられます。
水銀蒸気は吸うと肺から吸収され、気管支や肺などの呼吸機能を障害します。慢性症状は指先の異常なふるえが典型症状だそうです。
無機水銀はカドミウムと同様腎臓に蓄積し、腎障害を起こします。

メチル水銀などの有機水銀は脂溶性が高いので、細胞壁(リン脂質が主成分)を通り抜け、脳や胎児にも蓄積します。
中枢神経細胞を冒し、水俣病で見られた、聴力・視力・言語・運動などの障害(ハンターラッセル症候群)を起こします。

セレン化合物は水銀の毒性を弱めるはたらきを持っています。
マグロには高濃度の水銀が含まれていますが、同時にセレンも含まれているため、マグロもそれを食べた人間も無事でいられます。

鉛
鉛は主に消化管から吸収され、たんぱく質中のシステインやヒスチジンに結合しやすい性質を持ちます。
赤血球中のたんぱく質に鉛が結合し、血液中で酸素を運ぶ鉄の錯体「ヘム」の合成を妨げます。
結果として貧血を引き起こすほか、つくりかけのヘムである「δアミノレブリン酸」が血液の中に大量に流れ出し、
「鉛疝痛」と呼ばれる痛みの原因になるようです。

鉛は多くが骨に蓄積しますが、脳へも移行し神経過敏・情緒不安定・子どもの知能低下などが起こります。
成人よりも子ども・胎児のほうが鉛を吸収しやすく、影響が現れやすいようです。

鉛はかつて、その有用性から現在よりも広く用いられていて
水道管、お酒の容器、おしろい、ガソリンの添加剤などに使われていましたが、
現在ではこれらの用途には代替物等が使われています。

放射性元素
非放射性元素であるセシウム133、ストロンチウム88、クリプトン84などは、体内に存在したり接触しても無害ですが、
核分裂で生じる放射性元素セシウム137、ストロンチウム90、クリプトン85などはがんなどの原因となります。

体内の細胞中に多く存在するカリウムは、その一部がルビジウムやセシウムに置き換わっています。
同様に、骨の主成分のひとつであるカルシウムは、その一部がストロンチウムに置き換わっています。
これは正常な状態であり、普段身体に悪影響を与えることはありません。

また、クリプトンなどの希ガスは空気中に含まれていてわたしたちの身体と接触しますが、
希ガスは不活性な元素であるため、接触しても問題ありません。

しかし、核実験や原子力発電による核分裂で、放射性のセシウム・ストロンチウム・クリプトンなどが生成されてしまいます。
セシウムは筋肉などの細胞中に、ストロンチウムは骨に、クリプトンは大気中に留まり、がんなどの原因になったりします。
特にストロンチウム90は、骨腫瘍(骨のがん)や白血病を引き起こすといわれています。

参考文献
桜井 弘編"元素111の新知識 第2版",講談社ブルーバックス,2009
高木 仁三郎"新版 元素の小事典",岩波ジュニア新書,1999
John Emsley"Nature's Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements",Oxford University Press,2003
桜井 弘編"生命元素事典",オーム社,2006

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表は擬人化元素へのリンクになっています。興味のある元素がありましたらご覧ください。

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Rf Db Sg Bh Hs Mt Ds Rg Cn Uut Uuq Uup Uuh Uus Uuo
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